News43 フランス文学者が日本語を説くこと



 東京都が企画する毎月一回の「難聴者を相手とする」コミュニケーション教室に今月は何故か難聴とは全然関係ないテーマと講師が登場しました。
 加賀野井秀一先生は中央大学理工学部のフランス文学の教授です。にも関わらず他の大学で哲学を講じ、また別の大学で記号論を教えているというヘンな人です。それが何故「日本語について」などというテーマをぶら下げてこられたか?

 これは御家族揃ってフランスと日本を往復する度に感じるカルチュアショックの繰り返しから日本語を深く考えるようになったから…と本人はおっしゃる。
 
 いきなり概念と理念と観念の違い、加えて近頃の若い人たちがよく使うコンセプト、この違いを説明できる人は手を挙げて…と問いかけられて私はハタと立ち往生しました。
 私が答えられなかったのは当たり前で、これまでこの問いかけに反応された人は「私には説明できそうに思うが」とおっしゃった唯一人に過ぎなかったそうです。

 これらは幾ら漢和辞典を引いても正確な答えはでてきません。すべて明治期に外国から入ってきた専門用語をどう訳すか、寄ってたかって捻り出した人造語に過ぎないからです。意味なんか何にもない。ベースボールが何故野球なのか。フィロソフィが何故哲学か。それらの本当の意味を知ろうとせず、知ったつもりになって使うからおかしなことになるト。

 訳す苦心が面倒になるとナマのままで使うのが今のハヤリです。「マニフェストなんて言葉がもう一人歩きしているのは実に困ったものです」

 とにかく3時間半が短くて本当に残念でした。こんな講義ならもっともっと伺いたい。この後東京都の難聴者協会の理事会に出なくてはならいので、この合間に八重洲ブックセンターに飛んで先生の著書を求めてきました。
[日本語の復権 講談社現代新書]と[日本語は進化する NHKブックス]この他に[20世紀言語学入門]があるらしいので出直します。
           

 先生のお話しの骨格は「遺憾に思う、など外国語に正確に訳せない言葉を使うのは止そう」「以心伝心は日本人の間にしか通用しない。国際社会の中で馬鹿にされないためには理路整然と相手を説得する技術を磨かなくてはならない」と言うところにあります。
 「専門外のことを書くと忽ち足を引っ張られ、いじめられるのが普通ですが、幸い今のところ無事に済んでいます。」加賀野井先生そう笑っていらっしゃいましたが、耳の痛い方にとってはいじめるどころの騒ぎではないでしょうからね。

*要約筆記者はまず日本語を知らなくてはなりません。そのために「異色ある日本語研究家として注目を集めている」加賀野井先生が招かれて大変好評だった。一般大衆にも。それが今回の企画の言われのようです。 

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