News18 要約筆記の現場から



 この1月22日(土)東京港区三田の身障者福祉会館で月例のコミュニケーション教室が開かれまし

た。講師は東京都要約筆記者の会の事務局長広田典子氏でした。聴衆は31人、その過半数が健聴者な

のには驚きました。正常な聴覚を持ちながらこうしたテーマに関心を持って集まって下さるのは縁の下

の私共としても嬉しい限りです。そこで講話も「何故要約筆記なるものが必要なのか」健聴者の皆さん

に御理解頂くところから始まったわけです。

 

 耳の聞こえが悪くても拡声装置があれば補えるではないか…誰しもそう思いたくなるでしょう。しか

し、そうは行かないのです。どんなに素晴らしいホールでどんなに素晴らしい音響設備を使ってもスピ

ーカーからある程度以上離れると言葉がぼやけて聞こえます。非常に腹立たしいことですがそれが我々

難聴者の耳なのです。それで、難聴者の会合では必ず次のような情報補償の準備を致します。

イ、補聴器が使える人に対しては磁気ループシステムとか電波や赤外線を使ったワイヤレスシステム

ロ、手話が読める人に対しては手話通訳者

ハ、手話が読めず補聴器も役に立たない難聴者には要約筆記者(手書きかパソコンで)

 

 三つのシステムを揃えるのが理想ですが経費の関係で、あるいは人材確保が難しくてそうも行かない

場合があります。それで難聴者の会合ではこの内でどれを準備できるか予め案内に書き込むことになっ

ています。参加者は「このシステムがあるなら出かけよう」とか「自分に合うシステムが用意されてい

ないので今回はやめた」とか出席のメドにしています。今日の教室では勿論三つとも支度していまた。

 

 話し言葉を漢字まじりの文に変えると、ゆっくり話す人で毎分200字、超早口の人では400字程

度になります。手で書ける速さは毎分60字。飛ばして書くと80字まではいけますが、これは無理し

ているので長くは続きません。それで60字。

 話し言葉の内容をユックリさんで1/3、早口さんで1/6まで削らないと話の速さについていけな

いことになります。だから、細かい表現は全て捨てます。言おうとしている意味をできるだけ正確に伝

えるのが要約筆記の真髄です。

 

 要約筆記の最も単純な形は難聴者と筆記者が一対一でノートに書くやり方です。学校の講義が聞き取

れない生徒のために隣り合わせに座ってノートを取ってあげるスタイルなので「ノートテーク」と呼ば

れています。(適当な日本語がありそうですが、論議は別の場で致しましょう)

 

 一般に要約筆記と呼ばれるのはオーバーヘッドプロジェクター(OHP)を使うやり方です。OHP

を4人の筆記者が囲みます。書き役が一人、その真向かいに座ってフィルムシートを引っ張る役目が一

人、書き役の手が滞ったり字を間違えたりしたとき横から補う係が一人、一人は今先まで書き手だった

人が休んでいる(かのように佐藤には見えます。別の役目があるのかも知れませんが)


 軽い内容の集まりとか時間が短くて済む集まりでは2人で済ませることもあるようです。しかし、会

合の出席者の数の如何に関わらず原則として4人のチームが必要だと言うことは東京ならいざ知らず地

方では難しい問題に違いありません。

 

 また、要約筆記者がボランティアとして進んで協力してくれる場合は別として、誰の目から見てもふ

さわしい金額の謝礼を差し上げなくてはならないのは判りきったことです。東京都では会合の趣旨によ

って誰がそのお金を負担するのか、金額の範囲はいくらか、きめ細かい定めがありました。これまで国

なり都なりが負担していた分が新年度から大幅に減らされることが予想できるので、先日の厚生労働省

における話し合いのようなことが必要になるのです。

 

 難聴になると何かしらの情報補償システムの助けを借りないと選挙演説を始めとするあらゆる集まり

への参加が不可能になります。市町村の財政事情が苦しくとも、こうしたサービスを続けて貰わなくて

はなりません。私(佐藤)は東京や大阪のような大都市は良いとして市町村単位で要約筆記を普及させ

る可能性があるのか質してみましたが、都の要約筆記者の代表に対する質問としては重すぎたようで

す。当然のように答えは得られませんでした。ノートテークとOHPシステムの中間にあり、1〜2名

でできる要約筆記システムを考える必要が急がれるように思いました。

 

 *以上は講師のお話を骨格として佐藤が肉付けしたもので、文の内容についての責任は全て佐藤にあります。

2005/01/23

 

 

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