0716 必読!「サイボーグとして生きる」



 通勤の途上最寄りの地下鉄の駅で地上に出たところに書店があります。立ち寄ったらこれ見よがしにこの本が置いてありました。大体ここは普段は難聴関係の本なんか置かない店です。どうやら補聴器をかけて屡々立ち寄る私が狙い撃ちされた感がある。

 しばらく手にも取らずに表紙を眺めていました。表題からして人工内耳関係であることが判る。しかし、私は人工内耳装用者をサイボーグと呼ぶことに強い嫌悪感を持っています。
 心臓のペースメーカーとか身体の一部を電子機器で置き換えた「サイバネティック・オーガニズム」の略で、決して悪い意味ではないことは知っていますが語感として嫌なのです。この本の原題は「Rebuilt」なのに日本語訳で「サイボーグとして生きる」としたのも気に入らない。

 でも、結局買いました。買って会社で読み始めて夢中になりました。
 著者は生まれつきの難聴者で補聴器で用が足りていました。それが三十代になって出張先で突然残りの聴力を失いました。電池が切れた!補聴器の故障だ!と大慌てする姿が私には実に良くわかる。

 で、結局人工内耳ということになるのですが、この人は博士号を持つコンピューターを知り尽くした人です。だから技術用語がふんだんに出てくるので、デジタルに弱い私には手に負えないところがありますが、そのへんは適当に読み飛ばして掛け値なしに面白い。

 これを読むと森脇さんが一回目の音入れで一発で聞こえたのは如何にラッキーなことだったか判ります。彼は3年かかっています。それを彼はこう書いています。
 「〜神経可塑性のメカニズムにより脳が再編されたことが挙げられる。それまで刺激されたことのなかった聴神経が電気刺激を受けるようになったため、聴覚皮質で神経細胞が四方八方に樹状突起を伸ばし、新たなシナプス結合が次々と形成された。その結果失聴してから3年後の2004年には僕の脳内に以前とは全く異なる神経回路ネットワークが構築されていたのだ」。

 なるほどそうか、そんなこともあるのか。時間が必要な場合もあるんだ。つくづく溜め息をついたのです。この新知識は私にとって非常に貴重です。

 この著者は本は補聴器にも手話教育にも斬新な目を持っているようです。だから人工内耳の解説書として類似の本を一頭抜いていることに加えて難聴児を持つ親に是非読ませたい内容に満ちています。

 いちいち内容を紹介していてはキリがないので一つだけ。それは人工内耳を入れた三歳児たちが極めて正確な発音をするのに心の底から驚いていることです。
 「僕の場合、インプラントの埋め込み手術を受け、人工内耳システムが起動された後も呻吟し、意識を総動員してやっと聴力を取り戻すことができた。ところが彼等はごく自然に聴解力を身につけていた」。泣かんばかりに感動しています。

 私も同様です。これまで赤ん坊に人工内耳を埋め込むのは可哀相という気持ちがあったのですが、これで完全にふっきれました。それでインターネットを探し回って「みんな聴いて!」
http://homepage.mac.com/chisakosteiger/j-listen/j-listen.htmを見つけました。幼児への人工内耳装用の参考として文句無しに素晴らしい。皆さんにも勧めます。

 サイボーグとして生きる マイケル・コロスト著 ソフトバンククリエーテイブ刊
ISBN4-7973-3421-5 1800円+税


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