0615 日本音響学会でお願いしたこと



 社団法人日本音響学会という組織があります。この中に音バリアフリーに関する研究部門が生まれました。まず懇談会が発足して森脇さんも私もそのメンバーに加わって二月に一度のペースで集まっては話し合いをしています。
 この3月13日から三日間学会の春の研究発表大会が開かれました。御指名を受けて私も「補聴器ならぬ補聴器機の開発」と題する報告と意見の開陳をしてきました。

 私が話したことは大きく四つです。
@難聴になったら迷わず補聴器を使うしかないが、耳穴式が主流になって組み込める部品の数と使い勝手に厳しい制限を受けるようになった。その穴を埋める意味でどうしても目的に応じた専用機器の開発と活用が必要である。

A今の補聴器はアンプはデジタルにするとか長足に進歩しているがイアホンの性能が追いついていないので、実際我々の耳に届く音は4000ヘルツに達していない。せめて5000ヘルツがしっかり再現できるようになれば聞き取り能力は格段に向上する筈である。

Bその前提として4000ヘルツから8000ヘルツに飛んでいる今の検査法を改めて4000以上は1000ヘルツ刻みで測るようになって欲しい。それによって補聴器の性能に大きな前進があるのではないか。

C1.2〜1.5ボルトの電源で音楽観賞用耳穴式イアホンに匹敵する帯域を持つ補聴器用イアホンの開発を切に望む。

 少し補足説明をしましょう。

 私の耳は今ではぎりぎり8000ヘルツの音が聞こえます(参考までに申し上げれば7年前は7200ヘルツまでしか聞こえませんでした。人工内耳にするとしっかり8000ヘルツが聞き取れるようです)。それが補聴器を通すと3500ヘルツから先がストンと落ちてしまう。
 これは主としてイアホンの性能によるものです。電池一本をできるだけ長持ちさせようとするとどうしてもそうなる。
補聴器メーカーの責任と言うよりイアホンメーカーに頑張って貰わなくてはならない問題なのです。

 現在の聴力測定法は125〜250〜500〜1000〜2000〜4000〜8000と倍々に飛んでいます。我々難聴者が「音として聞こえてはいても意味がしっかり判らない」のは有声子音から無声子音を含む4000ヘルツ付近がしっかり聞こえていないからではないか。それが理由の全てではないにしても、このことを考慮するだけでかなりの数の聞き取り能力の改善が見られるのではないかというのが私の主張です。

 現に私の友人で両耳が115デシベルの重度難聴で補聴器が全然会話の役に立っていないのがいます。彼の聴感を測ってみたらギリギリ5000ヘルツが聞こえるのです。そこで8000までカバーするソラで聞かせたら立派に会話が成立するのです。
 これを根拠にして私は(今すぐは無理であることは百も承知の上で)将来は4000〜5000〜6000〜7000〜8000と細かく測るようにしてみてくれないか。それによって補聴器の設計になんらかのヒントが生まれるかもしれないと提案したのです。

 最後にイアホンです。どんなに優れたアンプを作ってもイアホンで頭打ちになっては出すべき音が出ません。低電圧で働いて、広帯域の音を再生できて、電力の消費が少ないイアホンは互いに条件が矛盾するので発想を変えないと作れません。これまでのように電磁的に振動膜を震わせる仕掛けでは難しいでしょう。
 昔ロッシェル塩の結晶を変形させて音を出すクリスタルイアホンというのがありました。湿気に弱いし、音もあまり良くないので今は見ることができませんが、電力を食わないことではピカイチでした。ああしたもので高音質・高能率のものができはしないかと期待するのです。

 これからは材料工学と電子工学が表裏一体にならないといけません。全国に雲のようにある大学の工学部や専門学校の内で新しい発明発見の圧倒的多数は東北大学から生まれています。その理由の一つは東北人の持つしぶとさであり、もう一つは優れた金属工学部があって電子工学科と相携えて研究を進めているせいではなかろうかと私は想像しています。

 ま、以上のようなことを提案と言うよりお願いしてきました。

 

 

直線上に配置
 
軽度・中度難聴者のページ に戻る

 補聴機器勉強会 ホームに戻る