0605 耳鼻咽喉科外科専門医の講義を聞く



 2004年12月25日に東京都主催の月例難聴者のコミュニケーション教室がありました。テーマは「難聴治療の現状と課題」講師として関東労災病院(川崎市)耳鼻咽喉科医師の杉内智子氏が予定されていましたが、差し支えができて渡邉尚彦氏が代わりに見えました。

 冒頭で「私の専門は頭頸部の腫瘍と顔面の外傷外科治療であって、大学同期で職場の同僚である杉内先生のように難聴や補聴器には詳しくない。それでも精一杯の話はしてみます」と如何にも外科医らしいサッパリした宣告をされて一同の共感を呼びました。「代理だよ」と言われながらも非常に丁寧なレジュメを用意してこられました。私が始めて見る資料が多くて、これはなくすわけにはいきません。大切に保存してこれからチョイチョイ引用させて頂きます。先生のお話から私が感じたことを箇条書きに紹介してみましょう。

 @蝸牛を輪切りにした図 これには私も「始めてお目にかかります」と言いたくなりました。転載できないのが残念ですが、これまでは一方向からしか知らなかった内耳の構造が立体として理解できました。

 Aこの図で基底板と呼ばれる部分がどう振動するのか、これも始めてみる珍しい図。いずれ森脇さんに頑張って貰ってこうした図を御紹介できるようにしましょう。今は話だけで御免なさい。

B赤ん坊の聴力をどう測るか? それには頭に電極を当てて脳波をとる「聴性脳幹反応検査」というのがあるのです。具体的にどうするのかまでは知りませんでした。その説明を得られたのが収穫でした。

「聴力改善への道 0303」に昔私が耳鼻科の先生に「頭に電極を当てて患者の協力なしに聞こえ具合が測れるようになるといいですね」という意味のことを話しかけて、半ば暴力的に「そんな機械どこにあるか教えろ」と問いつめられたことを書きました。そのことをつい思い出しました。
  「電極は何カ所に当てるのですか」と質問を出して「3本です」という答えを得ました。というと大雑把に「どの程度聞こえるか」を判断できる程度でしょうが、いずれは自動的にオージオグラムが描き出せる時期がきっと来るでしょう。そう期待しています。

 C赤ん坊の聞こえ具合がわかってもその後母親との連携を余程うまくしないと聴力の改善や補聴器使用や人工内耳埋め込みなどに繋がりません。関東労災病院では耳鼻咽喉科・産婦人科・小児科のチームワークが完璧で「新生児聴覚スクリーニング」を行っています。このことは是非皆さんに御記憶頂きたいことです。

 D滲出性中耳炎は中耳からジクジク液がしみ出します。慢性中耳炎は中耳が化膿して鼓膜に孔があきます。真珠腫などの腫れ物に成長することもあります。耳小骨の異常で難聴になります。日本人には少ない耳硬化症もあります。こうしたものは外科的処置が必要で渡邉先生の専門です。40枚のスライドフィルムとビデオテープを交互に写しながらの講義は迫力がありました。耳の中の手術を写真やビデオで見たのは勿論初めてです。講義が終わってから受講者全員に代わる形で「今日ほど迫力があって面白い講義を始めて聞きました」と御礼を申しあげましたが皆さんにお目にかけたかった。

E突発性難聴は一日でも一時間でも早く専門医にかかることが治るための絶対条件、と言い切られました。「今頃そんなこと言われても遅いよ」と言われそうですが。

 Fメニエール氏症、真性のものは15%「後は不明」渡邉先生は明快です。私のは終始「原因・治療法不明」で「症候群」のカッコつきでしたが今でもそうなんだと知って驚きました。「とにかくマジメで、物事にこだわって、熱心な人がかかる」と言われて大笑い…するわけにも行かないので苦笑い。HPもチャランポランで行きましょうか。もう遅いけど。

 G突発性難聴とかメニエール氏症とか言われた人がある年になってみると脳神経に腫瘍が見つかって、それが原因と知れることがある。森脇さん、我々は大丈夫だろうか?

 *内耳道の神経鞘から発生する腫瘍で耳鳴り、難聴、メマイを生じます。手術、ガンマナイフなどの治療法もありますが、高齢者で小さい腫瘍は増大傾向は少なく、経過観察例も多く認めます。両側の聴神経腫瘍を呈するのはレックリングハウゼン症候群と言われています。(レジュメから)

 H遺伝性の難聴については随分詳しい説明がありました。ミトコンドリアDNA変異を持つ難聴の家系図というものを見せられました。糖尿病と難聴を持つ家系は要注意です。ストマイ難聴のように薬物による難聴になるかならないかも家系的なものが多く、遺伝子の影響を考えざるを得ないとのことです。薬物難聴とDNAの関連は私にとっては初耳でした。

I「今後の新しい難聴克服への試み」として[脳性脳幹インプラント](これはニュース欄で照会しました)[再生医学](質問欄で検索できます)[遺伝子治療]の三つについて駆け足ながら紹介がありました。

 

 代役と謙遜されながらも慎重な準備と我々難聴者にも聞き取りやすく(要約筆記部隊も楽チンだったでしょう)理解しやすい名講義というべきで敬服の至りでした。関東労災病院は文字通り労働災害を専門に扱う病院ですが、一般人で診断を受けたいときはホームドクターの紹介が必要です。さもないときは予約でも受け付けますのでインターネットで検索して下さい。どのくらい待たされるかもはっきり書かれています。

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