0238 7年目で出たリクルートの辛さへの答え



 補聴器メーカーもお手上げなのが「リクルート現象」という難聴の一種です。何々症と名付けるような病気ではない。当面「現象」と呼ぶしかないような実に困った聞こえがする状態。そう「状態」のことです。
 一口にリクルートと言っても人によって様々なバリエーションがあるのでしょうが、私が知っている人の場合ではこうです。数字でいう聴力は30デシベル前後と言うことになっています。補聴器がなくても音は普通に聞こえる。ところが肝腎の中音部が酷い数字なので語感弁別力はすこぶる悪いのです。

 「え?え?」としきりに聞き直すので「あなた意地張ってないで補聴器使ったらどうなの?」と言ったら補聴器を使うと喧しくて神経が持たないと言います。
 どういうことなのか始めは見当もつきませんでした。根掘り葉掘り問い質してみたら、中音部はからきし駄目なのにある特定の周波数だけズバ抜けて良く聞こえるらしいのです。
 だから、極めて静かな環境で極めて静かに話してくれる相手となら補聴器が役に立ちますが、一寸衝撃的な音が入ると頭のてっぺんまでショックが走ると言います。実際「ワッ」と悲鳴を上げてイアホンを耳から引っこ抜く場面を何度見たか知れません。

 どこの病院でも補聴器メーカーでも匙を投げてしまって「あなたの耳に合う補聴器はどこにもありません」と引導を渡されているらしくて、私如きがどうあがいても難しそうでした。
 それでも見込みはゼロではありません。というのはソニーの箱形のFMワイアレス補聴器なら辛くも使えるらしいからです。これとてもソニーが既にこの方面から撤退しているので壊れたら後がない。機械が生きている内に代わりの物を作ってあげないと本人がお手上げになってしまう。

 これが7年前のことで、まァ私としてはその後考えられるありとあらゆることをやってみました。しかし、どう工夫しても一瞬にして「これは駄目!」とくるので途方に暮れるばかりでした。

 それがソラシリーズの開発が一段落したので試しに「対話ソラ」を持ち出してみました。これと「シリコンマイク」そして「小型両耳ヘッドホン」の組み合わせならこれまで見たこともない好い反応を示してくれました。
 いつものように悲鳴を上げることがない。ジッと目を据えて聞いている。皆が「大丈夫?ほんとに聞こえてる?」と交互に話しかけるのに唯「ウンウン」とうなずくばかり。「これは見込みがあるぞ」と、私の胸が次第に熱くなってきました。そしてお開きまでヘッドホンを離すことがありませんでした。
 これが3月25日のことで、永年私を苦しめた激しい耳鳴りが劇的に軽くなった平成13年5月10日と共に当分忘れることのできない日になるでしょう。

 リクルート持ちの人は他にもきっといるに違いありません。「あなたに合う補聴器はありません」と言われてあきらめきって口にも出さない人が少なからずいらっしゃるだろうと思う。この記事がそうした人たちの目に触れることを祈っています。役に立つか立たないか、これだけは試してみるしかありません。あきらめたらオシマイなのです。

 

 

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