0159 電池で働く「実用派」磁気ループを徹底して追ってみる



  0118で「5W級アンプを作る」0229で「磁気ループを乾電池で働かせる」を紹介しました。体調を崩して暫く穴を開けたお詫びと言いますか復活第1号としてこの問題を徹底して掘り下げてみることにしました。

 市販されている磁気ループセットは出力60Wくらいが主力になっています。永い間の習慣からこの程度のパワーがないと実用にならないものとの思いこみが難聴者の間にあるようです。この思いこみをなんとかして欲しいものですネ。
 こうしたことはいくら理屈を並べても駄目であって、実際にやって見せ聞かせてみて初めて納得して貰えることのようです。

 そこで私はこのホームページで何度か紹介している両耳115dB(今は105dB)氏を呼んで聞き比べをして貰いました。私の仕事場は一回り30mのループが張れます。この真ん中に彼を座らせて出力20W〜10W〜5Wと3種のアンプを切り替えて音声信号を送り込みました。

 両耳105dBと言いますと人工内耳の資格十分でテレホンコイルが使える補聴器も限られてきます。その補聴器で聞いてパワーの違いが判らないと言います。つまり20Wも5Wも同じだと。
 実を言えばこれは当たり前のことなのですね。何度か同じことを書いてきましたが、磁気ループの音の聞こえは補聴器で決まるので送り手の責任はせいぜい音質の違いくらいのものなんです。パワーを上げて大きく聞こえるというものではないのです(これがなかなか判って頂けない)。

 大出力のアンプが小出力のアンプに勝るのはループを長くできることです。40mとか60mとかの円周をカバーできます。広い体育館なんかでは偉力があります。
 それともう一つ。ループコードを20m用一巻きしか持っていないとき。このときはループの外に2mくらいは磁気がはみ出ます。だから実質としては一周30mくらいをカバーすることができます。それを当てにしてコードリールを1個しか手持ちがない難聴者団体はいくらでもあります。むしろその方が主流の感じがする。
 でも、率直に言わして貰うなら出力60Wのアンプにコードが20mでは可哀想ですよ。せめてもう一本20mを用意して、何時でも40m使えるようにしましょう。でないと折角のアンプが泣くというものです。

 磁気が大きく外に漏れるとということは良いことばかりではありません。廊下に筒抜けになるくらいは御愛敬として廊下を越えた隣の部屋にまで磁気が届くと妨害になります。いくつもの部屋で分科会をやると上下左右の部屋同士で混信して騒動が起こる。難聴者団体に所属しておられる皆さんなら先刻御承知の経験済みことです。

 これを防ぐにはどうするか?対策は簡単で、アンプの出力を押さえてループで囲い込んだ面積の外には磁気が漏れないようにすれば良いのです。出力5Wのアンプだとループから一歩踏み出したらもう聞こえません。これなら一部屋の中で三つくらいの分科会が開けます。

 では、大会などを例外として普段の会合で必要なループの長さはどれくらいで足りるのか? 私はこれまでの体験から最も多いのが20m,長くて30mと言い切ることができます。一周30mだと椅子だけで300人をカバーします。実用上十分ではないでしょうか。冒頭の両耳105dB氏を呼んでの比較テストはこの駄目押しだったのです。

 一周30mのループに必要なアンプのパワーはいくらかと言いますと5W、おまけをつけても6W。異説は色々あるでしょうが、これは私の実験済みの体験から出た数字です。

 本題はここからです。
 0118で紹介した5Wアンプを用いた磁気ループはここ3年の間に随分アチコチで試して頂きました。その結論は「もう少しパワーがあれば」でした。
 これはパワーが足りないと言うより発言者の声の大きさとマイクの使い方が問題なのです。蚊の泣くような声の人がいますし、難聴者の発言はどうしても手話を伴うのでマイクを振り回す。どんな大パワーのアンプを持ってきてもどうしようもないことです。
 でも、使い手にしてみれば「こんな小さなアンプで実用になるだろうか?」「あるもんか」という思いこみが強いので、どうしてもパワーが足りないという言い方になるのですね。それで、今回は内心勿体ないと思いながらも簡単なアンプをプラスしてみました。
 0114で紹介した「1.5Vで働くマイクアンプ」です。これを加えるとボリウムを時計の針で3時以上に回すと普通の声の大きさの人ですと音が歪み始めます。普段は絞って使わなくてはならない。蚊の泣くような声の人に備えたマージンと言いましょうか。
 人の心理とは面白いもので、ボリウムを上げて音が歪むくらいでないと安心できないもののようです。「これならいい。一段とパワーが上がった」と言う。おかしくもあり面白くもある現象ですね。

 0118のケースを二回りほど大きいのに入れ替え、マイクアンプを加え、ついでにマイク入力を3回路、外部入力1回路に増やして本格的な構成にしたのが写真の真ん中です。

 変わっているのは電源の差し込み口が二つあることです。一つには15V(ACアダプター)、一つには「電池」と張り札してありますが、どらも同じ物です。パラレルになっているだけです。理由は後で説明します。

 出力5Wだと本気で電池が使えます。一度でも磁気ループの設営に参加したことがある人は骨身にしみている筈ですが電源コードの長さが足りないと騒いだ覚えがある筈です。せいぜい5mの延長コードを1本用意しておきゃいいのに気が回らない。それでアンプの置き場所にきつい制限を受けてドタバタする。
 電池の用意があるとこんな煩わしいさからいっぺんに解放されます。バスの中でも野外でもループが使える。どうせバス会社にいくら頼んでもループなんか張ってはくれはしないのだからバス旅行の都度自分で持ち込むに限ります。

 さて、写真を御覧下さい。アンプの上に横になっているのが鉛バッテリーです。12V、2.6Ahという規格が最適です。値段は2,700円。安心さから言ったらこれを越える物はありません。一日中どんな使い方をしてもビクともしない頼もしいヤツです。停電対策にもなるしネ。目方が1kgと少し重いので人によっては嫌われるかも。

 写真の左端はご存じスイッチングアダプターです。15V、1.6Aで1,000円。何故15Vなのかと言いますとアンプを12Vで働かせたときよりはパワーが上がるためでもありますが、隣に並べたニッケル水素電池の充電用としても使うことを考えたからです。使い方は後で説明します。

 ニッケル水素電池は単三型2,500mAhという規格の物で、一本350円。乾電池と違って一本あたり1.2Vですから10本直列にして12V.値段は3,500円。鉛から見ると随分高くつくけど抜群に小さく軽いのが売りです。
 御注意頂きたいのはケースです。アキバで売られているこの手のケースにろくな物はありません。10本押し込んで一発で12V出るのはまずありません。隣から隣へと結んでいるリード線が全て安直なカシメでハンダづけしているわけではない。必ずどこかしらに接触不良があります。テスターでいちいち測りながら接触が悪いところところを手直しするのが当たり前になっています。
 だから写真では最後にビニールテープでグルグル巻きにして動かないようにしています。こんな作業は自家用だからできることで、他人様にお世話するときは必ずリブつきの電池を使っています。皆さんもそうして下さい。

 この即席パック型電池で5Wアンプを働かせると昼休み1時間を挟んで8時間は保ちます。充電には先に述べたようにアンプ電源端子にACアダプターと並べて差し込みます。アンプのスイッチを切った状態でコンセントに接続すると充電が始まります。自動OFFの回路はないけれど電池容量2,500mAhの1/20の125mA以下の電流に押さえていますから一晩つけ放しにしても大丈夫。別途に充電器を買い求めなくても良いのがこのシステムの安上がりなところです。

 最後に。こうなるとアルカリ乾電池ではどうなる?との質問が必ず出るでしょう。試してみました。電気店で高い電池を買うのは愚の骨頂です。100円ショップで十分。4本パック100円ですから5パック買って下さい。500円。これを10本用電池ケース2個に入れると15Vのパックが二つできます。
 これをアンプの電源端子に二つとも差し込みます。パラレルになるので電圧は変わらず15Vです。これがどうにか4時間保ちます。4時間近くなると音量のピークの時では14Vから12Vへとガクンガクンと落ちます。それでもまだ12Vを維持していますから実用上はこれでOKです。
 昼休みに入れ替えるとして一日分の電池代が1,000円です。使い捨ててですから高いと言えば高い。でも、充電なんて手間は真っ平だという人なら1,000円は安いものと言うでしょうか。

 以上アンプの出力が5Wなればこそできる芸当の幾つかを御披露しました。値段は全て秋月電子通商調べです。

*お詫び:バスの電源は24Vです。DC−DCコンバーター組み立てキットを使えば呆気ないほど簡単に12V電源が自作できます。その写真を入れるのを忘れました。御勘弁!

  

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