0125 できない筈の工具ができること



 見たところソックリの工具が4丁並んでいます。工具
 左端は皆さんよくご存じのプライアです。支点をずらせるようになっているのがペンチとの違いです。
 このサイズのプライアでは締め付けられるものの大きさが約15mmまでですが、支点をガチャッとずらすと25mmまで広がります。よく考えたものです。

 その隣をハンドバイスと言います。バイスグリップと呼ぶ人もいます。これは品物を挟んで締め付けるとロックされてしまいます。バイス(万力)の代わりになるので「手持ち万力」と言うわけです。ロックを外すのも指一本でOKで、使い慣れると手放せない便利な道具です。プライア同様私は色んなサイズの物を揃えいます。

 その隣のプライアの親分みたいなのは最大50mmまで締め付けられます。ウオームギアを使ったパイプレンチという道具がありますが、どっしりと重いので手軽に行きたいときはこちらを使っています。

 さて、今日の主題はここからです。この3丁の工具はいずれも支点を中心として円を描くように動きます。ペンチでもラジオペンチでもニッパーでも鋏でも全てそうです。
 これが円ではなく平行移動するように締め付けられないものでしょうか?
 
 何のために?と言われそうですが、且つてCリングという材料を締め付けるために必要でした。鉄線を曲げたアルファベットのCという形をした小さな素材があります。太い鉄線を組み合わせて鳥籠などを作るときの締め付け用として普及しています。私はヨット作りにこれを大量に使いました。
 専用のドイツ製の工具があるのですが、重いし、高価だし、エアコンプレッサーがいります。なんとか手軽な工具か欲しいと思いました。

 それで小さなプライア、小さなハンドバイス、ラジオペンチなどを加工して20丁も作ったでしょうか。これらを総動員して船は作ったのですが、円運動する締め付け工具は使い勝手がよくありません。下手するとCリングが兎みたいにピョンと逃げ出してしまう。それで顎の部分にスリットを入れて逃げ出さないようにするとか知恵を絞ったことでした。

 円運動ではなくて平行移動してくれるとCリングは逃げにくい。手で握りしめるという動作でありながら平行移動しながら締め付ける工具ができないものか随分考えました。考えただけではない。片端から工具メーカーを回って相談を持ちかけました。
 どこもかしこも一寸考えただけで「不可能だ」というのにはガッカリしました。そう簡単に言わないで一週間でも一月でも考えてみるのがプロではありませんか。情けないですネ。とにかく名のある工具メーカーは殆ど当たってみましたが全部断られました。

 ところがですネ。余程立ってから長崎郊外にある日曜大工店で見つけましたよ。[ロボグリップ]と言いまして右端の写真がそうです。
 これを見つけたときは本当に嬉しかった。握ったり緩めたり永い時間遊んでいました。遊ぶだけではなく勿論買ってきました。アメリカ製でした。輸入元に電話してもっと小型の物も取り寄せて貰いました。

 とにかく仕掛けを見て「参った!」と思いましたよ。やればできるものですね。「絶対にできない」と言い切った日本の工具メーカーを全部集めてギャフンと言わせてやりたい。今でもそう思います。

 私だってお客さんから無理難題を言われたとき「そんなことできるもんか」と言いたくなることが良くあります。でも、お客さんの注文に道理があると思ったら「できない」と言わないで宿題として頂いて帰らなくてはいけないのです。

 私は今も考えに詰まるとこのロボグリップを握ったり緩めたりしながら遊んでいます。いくら考えても私には思いつかなかった。それをチャンと形にして見せてくれたヤツがいる。えらいものです。あるはず無いと思った道も探せばどこかに見つかるものらしいですね。

 あきらめずに折に触れては思い出しながら考えていれば一年もたってからヒョイと答えが湧いてくることがあります。そう言うアイデアは勿体なくて簡単にはこのホームページには書けないよー。ごめんなさい。ツイこんなこと書いてしまって。



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