0108 音に変わる部分(イアホン/ヘッドホン)の使い分け



 380アンプは出力インピーダンスさえ合っていれば磁気ループでもイアホンでもスピーカーでも何でも繋げる重宝なアンプです。手元にあるもの、借りられる物、手当たり次第に繋いで音を出してみて下さい。音の大きさや音質がこんなにも違うものかと驚かれるでしょう。

 

 スピーカーに音声電流を流して、その内何パーセントが音に化けるか。その比率をスピーカーの能率と言います。スピーカーも色々種類がありますが最もありふれているのはコーン型ですね。今は直径の小さいのを高音専用のツイター、大きいのを低音専用のウーファーとして使い分ける時代ですが、大小に関わらず全音域と称する物が大昔からあります。全音域型を並べて順に音を出してみると正直にサイズの大きい物ほど大きな音が出ます。つまり能率が良いのです。更に言い換えればコーンが楽に動いています。

 

 大きいのが良いけど住まいが狭くなって図体の大きいスピーカーシステムを持ち込むのが難しい。そこで小さい全音域型スピーカーを小さい箱に入れたブックシェルフ型と称する物に人気があります。「大型並みの音が出る」と力んでいるメーカーもありますが、ナニ無理しているだけです。小さいスピーカーを小さい箱に押し込むと更に能率が悪くなる。だから大きな出力を持つアンプに繋いでやらないとそれらしい音になってくれません。

 

 スピーカー本体が小さくとも、箱の代わりにアルペンホーンみたいにありったけ[のど首]が長いラッパに一端を当ててやれば驚くほど大きな音になります。つまり、ホーンは箱よりも段違いに能率が良いのです。

 私は学校の体育用具置き場(とか放送室)などで運動会専用みたいに退屈しているトランペットスピーカーを借り出して380アンプで遊んで見なさいと書いたことがあります。あれは冗談ではなくて本気なんです。掌に乗る380アンプでも直径の大きい(能率の良い)スピーカーと組み合わせればグラウンド一杯に響き渡る音が出せます。同じトランペット型でも直径が小さいとメガホンに毛が生えたくらいの音にしかなりません。それでもコーン型にくらべると遙かに遙かに大きな音ですが。

 補聴器を含めた「聞こえの援助機器群」にはスピーカーとは違った難しさがあります。乾電池で働くアンプは何よりもまず「できるだけ電気を食わないこと]が優先します。そして[必要にして十分な音の大きさ]がこれに次ぎ、音質は「多分に主観的な要素を含む」が故に最後に論じられるのです。イアホンも同じことです。

 私のジャンクボックスに転がっているイアホンを数えてみたら60個を越えていました。秋葉原で次から次へと買い求めては聴き比べた結果です。見かけはソックリでも値段と音の違いは誠に多彩です。能率が良くてなお音質も良いとはどういうことか、詰まるところ私の耳に合うか合わないか甚だ主観的で頼りない比較法でしかないのですが…。

  ふるい分けて残ったのが以前に推薦したビクターの品なのですが、これがベストは決して言いません。音としては輸入品のシュアーにもっと良いのがありましたが値段が1万円以上します。いくら良くてもこれでは私には買えませんし皆さんにお勧めするわけにも行きません。ここはオーデイオマニアのためのコーナーではないのです。

 もう一つ大切なこと。[密閉型としては]という条件がつきます。ここで密閉型と開放型の違いをはっきりさせておきましょう。

  カセットテープによるウオークマンが市場に現れてから本体がCDになりMDになりICレコーダーと進化しても、ついてくるイアホンはインナータイプ型のイアホンと決まっています。コストの面でも実用の面でもイアホンの進化が止まっているのです。

  率直に言いますが音の良さについては密閉型は開放型にかないません。詳しく説明しましょう。スピーカーでもイアホンでも音を出すのは一枚の板です。板が前後に振動して音を出す。音は前方向にも出るし後方向にも出る。我々にとって必要なのは前方向つまり我々に向かっている音だけであって反対側の音は余計ものです。

 イアホンをよく見て下さい。後ろに小さな孔とか隙間が作ってあります。背後の音はここから外へ抜け出します。イアホンを耳穴にスッポリはめ込んでしまえば背後音は聞かずに済みますから本人にとっては都合が良い。しかし、電車の中でシャカシャカ背後音を聞かされる周りの人はたまりません。真夏にエアコンから歩道に向かって吐き出される熱のようなものですね。

  補聴器にこの手のイアホンを使うと後の穴から出た音がマイク側に回り込んできてピーッという発振音になります。犬の悲鳴に似ているのでハウリングと言っています(howl)。難聴の程度が軽い人では起きませんが重い人だとどうしてもボリウムを上げ勝ちにしますからハウリングから逃れられません。お年寄り用として開放型のイアホンを使った[聞こえの援助機器]を屡々市場で見かけますが飽くまでも軽度難聴用と御理解下さい。

  この背後からの余計な音を吸収させる工夫をしたのが密閉型です。この工夫が振動板の動きにはブレーキになりますから、どうしても能率は幾分悪くなります。開放型と聞き比べるとスッキリ感が少し犠牲になっていることが判ります。重度難聴者がマイクを使う場合は耳栓式の密閉型イアホンを使う以外に方法はありません。それでもなおハウリングが起こる場合は本人の耳穴の型をとって特注品の耳栓を作ります。イアモールドと言っています。

  私はその日の耳の調子と目的によってイアホンを使い分けています。自宅で音楽を聞くときは大型のヘッドホンを使います。勤務先の昼休みには両耳の開放型イアホンを、周囲に遠慮しなくてはならないときは両耳密閉型を、補聴器用としては片耳の密閉型を使うことにしています。体調と耳の具合がよいときはマイク使用にも関わらず片耳開放型が使えます(このときは大変幸せな気分になれます)。つまり鞄には何時も4種類のイアホンが入っているのです。いずれ皆さんも真似てみて下さい。


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